16.2 減価償却と借入金返済額
父 ここで資金会計とキャッシュフロー計算書の考え方は一致する、即ち、キャッシュフロー計算書では減価償却費はCashを実現したものとして、当期利益に加算している。前払費用を繰越損益等の項目とする資金会計では減価償却費の相手勘定となりCashは±0となる。即ち、減価償却費は無かったことになり、キャッシュフロー計算書と同じ土俵に立つことになる。では何故資金会計では機械勘定を前払費用勘定に読み替えて繰越損益等にもっていかないのか。資金会計では損益資金を100プラスして固定資金を100マイナスしても安定資金は変わらないので、そのままにしている。そのままにしないと、本来の資金分析に歪が生じるからである。兎に角減価償却という考え方は会計学の突出した発明でいろんな影響がある。
空の青湖の青さや赤とんぼ
16.3 減価償却と借入金返済額
緑 キャッシュフロー計算書の減価償却後の利益に減価償却額を加算してCash利益とする意味が資金会計を通して理解できました。
父 それは良かった。しかしCash利益が増えたのは損益資金だけで、固定資金は同額減って±0になることを明確に示しすことができるのは資金会計だけだ。
緑 減価償却費を当期利益に加算してもしなくても、安定資金は(短期借入金の場合は現金預金は)変わらないということね。
父 借入金は固定資金又は流動資金の項目だが、借入金を前受収益と考えると損益資金の取引となる。しかし資金会計の資金別貸借対照表上の対応は減価償却に対する前払費用と同じだ。借入金を前受収益と認識することで、損益資金のなかで返済が費用であるということが理解しやすくなる。しかし借入金を前受け収益として資金別貸借対照表上認識しないのは、損益資金にもっていかないで固定資金としておこうが、流動資金としておこうが、現金預金変わらないので、本来の資金分析に生ずる歪をさけるために、あえて借入金を前受収益と読み替えていない。
秋茜あかねの果てを目指しゆく
16.4 減価償却と借入金返済額
緑 減価償却の問題も借入金返済の問題も資金別損益計算書で資金会計の立場からは、氷解していると思うわ。
父 Exactly! Midori. 前々日と前日の記述から得られる結論は:
1. 減価償却費はCashが実現した隠れた利益である。
2. 借入金返済額はCash損失である。利益がなければ通常の借入金返済はできない。
3. 減価償却額を超える借入金返済は表面に現れた当期利益がなければ、返済できない。
4. 当期利益にたいするステイクホルダー(利害関係者)の一員に
金融機関を引き込むことは経営者の責任ということになるかもしれない。
5. だから借入金の返済額を減価償却額の範囲内に収めること大切だ。
6. そうすれば、レバレッジは妥当な範囲内に収まり、借入金が多くて異常に大きなレバレッジとなり、不健全な企業が示すROEの異常値もなくなると思う。
7. 借入金返済が減価償却額の範囲内に収まり、さらに当期利益があれば、新規投資に対する⊿Gがあったと考えられる。
8. 土地は減価償却されない。だから土地購入は自己資金によるべきだ。
9. 減価償却費はCashが実現した隠れた利益として認識されるが、減価償却は取引相手の無い取引で、資金別貸借対照表の安定資金が示すようようにCashは±0となり、減価償却をしたからといって余分の現なまが生まれたことではない。
鬼灯や赤き思ひ出湧きいづる
15.43 段階別資金の意味
緑 固定資金が黒字の場合から、減価償却と借入金返済額という大きなテーマに飛んでしまったので、話を本筋に戻す頃じゃない?
父 了解しました。安定資金は黒字になったり、赤字になったりする。業態や経営姿勢等も勘案して、黒字の評価をしなけばならない。おおむね黒字は良いことだが、良くない場合もあることを忘れてはならない。アソシエントテクノロジーなどその一例である。
赤とんぼ茜の空は故郷か
緑 安定資金の赤字は問題ありそうね。
父 安定資金は損益資金、継続損益資金、実質損益資金、真正損益資金、正味損益資金の状態を映した結果だ。安定資金でキャッシュフローの相が変わる潮目なのだ。キャッシュフローの良し悪し、経営の巧拙の結果が安定資金に現れる。
緑 安定資金が赤字だと短期借入金でバランスをとらないと必要な現金預金が残らないでしょう?
秋桜浮かぶ夢二の女達
閑話休題: 国民経済と減価償却費
企業会計を社会全体で考える。償却資産に投資する発注者側にとっては、単年度の発注額がすべて経費にならないで減価償却額だけが経費になるのに対して、受注者側にとっては、単年度の受注額がすべて売上となる 。10年で償却する10億円の機械装置の発注を例に考える。
| 発注企業の費用: | 減価償却費 | 1億円 | 機械装置 |
| 受注企業の収益: | Cash | 10億円 | 売上 |
国民経済 | としての利益: | 9億円 | |
ケインズ経済学では設備投資が活発な時期は会計上の利益が増え、社会全体が儲かった錯覚(売上即利益ではない、30%の荒利があるとすると3億円が利益となり社会全体では2億円の利益となるので、錯覚といったと思う)が生まれ好景気となる。逆に設備投資が低調な時期は社会全体の損失が増え(減価償却費という費用のみが発生し)、社会全体が損失を出している錯覚が生じ不景気となるとしている。
閑話休題: 国民経済と減価償却費1
ここで前日の設定を資金会計で考えてみる。資金会計では10億円の機械装置の購入は10億円の前払費用を支払ったと考える。
| 発注企業の費用: | 前払費用 | 10億円 | Cash |
| 減価償却費 | 1億円 | 前払費用 |
| 受注企業の収益: | Cash | 10億円 | 売上 |
| 国民経済としての | としてのCash利益 | ±0円 | |
制度会計の国民経済利益合計は9億円だが、資金会計では発注企業からCashが10億円出て、受注企業に10億円入るので、Cash利益は±0となる。減価償却費の計上は取引相手のない取引なので、Cashは±0となり国民経済全体としてのCash利益は±0となる。ここで重要なことは取得した機械装置が更なる⊿Gを産むことであり、10億円というキャッシュフローが起きたことである。
閑話休題: 夢
日本の企業の財務データーが資金会計理論でデターベース化されたら経済政策はもっとダイナミックになると思っている。Cashは水と同じで動くCashは腐らず、社会を活性化する。国民経済全体のニュー資金別貸借対照表ができれば、国民経済全体として、⊿Gが増えたか、サイトのバランスは妥当か、在庫は適正か、オーナズエクイティは増えているか、払込資本金は増えたか、固定投資は妥当か、資金的に成長したか、長期借入金額は適正か、安定資金に状態はどうか、短期借入額は妥当か、現金預金額は適正か等々が一目で解るからである。
15.45 段階別資金の意味
父 安定資金に至る損益資金、継続損益資金、実質損益資金、真正損益資金、正味損益資金の状態から、その期の経営の大方の評価が決まるといってよい。
緑 安定資金の相について説明して?
父 佐藤先生は損益資金が安定資金として残っているのを最上としている。それは実質損益資金が黒字で、固定投資は自己資金のみで賄われ、借入金がない姿だ。任天堂がその一例だ。ここで資本主義先進国の経営者は俺なら借入金も目一杯して、もっと稼ぎ株主に貢献する、といって無借金会社はM&Aの対象とされるというような話を聞く。そのことについて脇道に逸れるが、ちょっと考えてみよう。
心象かほむら揺れたつ曼珠沙華
17 無借金経営ということ
緑 無借金経営は経営の理想なの、それとも理想ではないの?
父 「減価償却と借入金返済額」のところでした話を味わってほしい。減価償却費という隠れたCash利益が全部借入金返済で消える企業と,
減価償却費というCash利益が丸々残る無借金企業と比べると、後者が断然優れている。その優劣の分岐点は償却資産に投資するとき自己資金があったか、なかったかということだ。
穂薄をしごく歓喜やたなごころ
資金会計原論 17.1 無借金経営ということ
緑 その時増資により自己資金を得るという選択肢もあるんじゃない?
父 そうだ。増資後に続く配当負担がいいか、返済と共に減っていく利子負担を望むか、いろんな経営判断がある。経営者の頭の中は借入金返済は費用だが、経理屋が、いやそれは借入金という負債が減ることで、費用ではないと意見を言う。Cashでみれば経営者の頭の中が正しい。「減価償却と借入金返済額」のところをしっかり頭にいれて、その時々の判断を誤らないようにして欲しい。
桔梗咲く咲きたしされど目立つまじ
資金会計原論 17.2 無借金経営ということ
父 ここで無借金経営である任天堂のすごさを見ておこう。
決算期 | 3/03 | 4/03 | 5//03 |
損益資金 | 9,067 | 9,602 | 9,526 |
安定資金 | 8,226 | 8,539 | 9,643 |
現金預金 | 7,487 | 7,673 | 8265 |
安定資金は損益資金の86%以上が残っている。減価償却資産は減価償却により投下資本の回収がなされ、次の投資は借入によらず自己資金で余裕をもって実行することができる。好循環は続く。故佐藤幸利先生は損益資金が丸々現金預金として残るのが理想だ、と言われた。
蓑虫の住む戸のあるじ歌人とか
閑話休題 平沼赳夫さんが小泉内閣の経済産業大臣のときビジネスモデル特許に関連する政府の考え方について平沼大臣にメールを送ったことがありました。忘れた頃ですが大臣から懇切な回答をメールでいただきました。大臣にとって些細なことかもしれませんが、政治を預る真摯な姿勢に感動しました。それから平沼さんに関する報道に特別に気をつけてきました。
資金会計原論 15.46 段階別資金の意味
緑 安定資金から無借金経営に話が飛んだけど、面白かったわ、ここいらで、本筋に話を戻すころじゃない?
父 そうしよう。安定資金が赤字だと短期借入金で赤字を埋めないと次期早々に必要な現金預金が残せないことになる。ここで先に進む前に、安定資金が黒字の場合損益資金が残っているのか、増資資金が残っているのか、長期借入金が残っているのかを把握した上で、安定資金以下を見ることが大切だ。
墨流す遠山並や秋桜
資金会計原論 15.47 段階別資金の意味
緑 流動資金の最重要項目は短期借入金でしょう?
父 アソシエントテクノロジー(AT社)の安定資金は金額で見ると損益資金の95%が残っているが、その中身は87%は長期借入金で残りが増資で得た資金だ。実質損益資金の赤字が26,042万円あり払込資本金の約半分が欠けこんだ。それを補填したのが長期借入金の増加額26,535万円だ。長期借入金増加額が手付かずで安定資金として残っている。
飛騨路かな新酒に添へし朴葉味噌
資金会計原論 15.48 段階別資金の意味
緑 AT社の3期のニュー資金別貸借対照表を見ていると粉飾で開いた穴がどんどん広がっているのが解るわ。本当にCashは嘘をつかないのね。
父 31,157万円も黒字安定資金があるのに更に短期借入金が3,000万円ある。未払金も1,040万円増えて3,256万円となった。
http://www.visiblecashaccounting.jp/
をクッリクするとホームページに飛び、「New資金別貸借対照表」をクッリクするとAT社のNew資金別貸借対照表をみることができます。
レトリバーに幼女君臨す秋の雲
資金会計原論 15.49 段階別資金の意味
緑 AT社の財務諸表は中央青山監査法人の幹部が何故粉飾に気付かなかったんだろうと慨嘆したときいていますが、プロを騙すぐらい見事な財務諸表だったようね。
父 AT社のようにプロを騙したのが日本コーリンだ。コーリンの安定資金は赤字2,413百万円だった。それに対して短期借入金は6,220百万円もあった。何故こんなに多額の資金調達を必要としたのだろう。
緑 払込資本金の59%が吹っ飛ぶ実質損益資金の赤字2,150百万円があったからじゃない、パパ?
菱の実や少年の日の沼のこと
資金会計原論 15.50 段階別資金の意味
父 その通りだ、緑。Cashは嘘をつかないんだ。次に進もう。赤字安定資金を短期借入金で埋めきれないと、その他流動資金でバランスをとらなければならなくなる。それは綱渡りだ。その例がWorldComだ。WorldComの粉飾は収益に科すべき費用を資本的支出としたために、粉飾の影響は実質損益資金に現れないが、正味損益資金に資金の縮小として現れている。その他異常な指標を読み取れるが今までに話題として取り上げていないので、後日に語ろう。
稲架の里入日に透けて列車ゆく
資金会計原論 15.51 段階別資金の意味
緑 安定資金の赤字を短期借入金で埋めることができないと修正安定資金が赤字になってしまうでしょう。その赤字はなにで埋めるの?
父 優良企業で修正安定資金が赤字になることは稀だ。修正安定資金が赤字だと預り金、未払い金等の超短期資金でバランスを取らなければならない。綱渡りということになる。そして月商の半月分も現金預金を確保できなければ、風前の灯だ。
野葡萄の匍匐の先にありしこと
資金会計原論 15.52 段階別資金の意味
緑 資金会計は現金預金のボリュームだけでなく、なにから構成されているか分析するのでしょう?
父 そうだ、かかる分析は多分資金会計だけのものだと思う。アソシエントテクノロジーの現金預金39,645万円はボリュームとしては損益資金の120%だが、その構成要素は未払金等の超短期資金が5,486万円、短期借入金3,000万円、長期借入金27,272万円と払込資本金2,887万円であり、ほとんどが借入金等である。現金預金が損益資金より大きい企業は一応その構成を吟味する必要がある。
或いは損益資金が必要現金に比して異常に小さいのではと疑ることも必要だ。損益資金が赤字の場合は問題外だ。
野に出でん釣鐘人参の小径より
資金会計原論 18 安定資金の赤字
父 安定資金が赤字だと一般的に資金繰りの良くない企業が多いが、一流企業でも安定資金が赤字になる場合もある。それを見分ける目を養うことが大切だ。
緑 それは分かるけど、投資に見合う自他資金の調達をしっかりしていけばいいんじゃない、パパ?
父 鋭いね、緑。その話をしよう。故佐藤幸利先生が資金会計を提唱し始めた頃、多士済々の公認会計士や税理士が集まった。中には安定資金は赤字になってはいけないと言う人もいた。
桔梗に添ふ人影は同じひと
資金会計原論 18.1 安定資金の赤字
父 各社の資金別貸借対照表を作ってみると、一流の企業でも安定資金が赤字になるものがある。そして安定資金が赤字でも不安がない。これは赤字では駄目だというイメージが安定というネーミングにあるような気がしたんだ。
緑 安定という語感から、黒字なら安定しているというイメージが湧いてくるわね。
父 企業は継続的に修繕維持、改修、新規投資をしなければ、⊿Gが先細りとなってしまう。積極的な企業は利用できる経営資源を総動員してそれらを実行する。
芙蓉咲く乙女の頬の産毛かな
資金会計原論 18.2 安定資金の赤字
緑 その結果安定資金が赤字になることがあるのね。
父 このような体力のある企業の積極的な安定資金の赤字はどの程度まで許容されるのだろうか。それは流動資金の範囲内と言うことができる。現金商売でない限り売掛サイトの関係で資金が必要となる。棚卸資産も資金が寝る。これら資金を自己資金で満たせないとき安定資金が赤字となる。このような「売上仕入資金+棚卸資産」の範囲内の赤字は良しとすべきだと思う。
小夜更けて鬼灯点る想ひかな
資金会計原論 19 キャッシュフロー値
緑 キャッシュフローの値というとキャッシュフロー値が何アンペアとかいうこと?
父 鋭いね、緑。キャッシュフローだから電流のようにアンペアという値は使用しないが、コンセプトは電流と同じだ、キャッシュフローもフローだから、フロー値があってもいいはずだ。
緑 ということは、オームの法則が適用されるわけ?
父 そうだ。オームの法則は電圧と抵抗の正比例関係と反比例関係から電流値を出すものだ。
海蠃弾け座の気弾ける哀楽に
資金会計原論 19.1 キャッシュフロー値
緑 物理学と資金会計の融合ということ・
父 そういうことだ。そのことに入る前に、資金別貸借対照表がキャッシュフロー計算書であることを、ここらで整理しておこう。
緑 そこが大切なところね、私も頭を整理してみたいわ、パパ。
父
http://www.visiblecashaccounting.jp/ をクッリクして、「資金会計原論」から「資金別貸借対照表」をクッリクすると、GE社の2002年と2003年の資金別貸借対照表をみることができる。我々の資金別貸借対照表は連続3期を基本とするが、ホームページの紙幅の制約から2期の資金別貸借対照表の表示を余儀なくされている。
重陽の明治の神の社かな
資金会計原論 19.2 キャッシュフロー値
父 制度会計の財務諸表の一つになったキャッシュフロー計算書を頭において資金別貸借対照表をみると解り易い、2期の資金別貸借対照表の間に増減欄がある。その増減欄は現金預金の増減欄で終わっている。キャッシュフロー計算書と構成内容の組立方は違うが、コンセプトは同じということができる。キャッシュフロー計算書はその期のCashの動きを示している。
藁塚は雀散らせし烏の座