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奥井 英作

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資金会計原論Theory of Cash by Funds17.12 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月1日09:04:57

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.12 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

緑 資金バランスの見方は先ず一番大きな資金に注目することでしょう?

父 そうだ。一番大きな資金は2006/06期は資本金ですね、この期は20億円の増資が行われたためです。この件は暫らく置くこととします。2007/06期の資金別P/Lの大きな資金である短期借入金はしばらく置くとして、この期を通して大きな資金は棚卸資産です。2007/06期に損益資金が大きくなりました。原因はこの期に大きな利益8億円を計上したからです。実は大きな利益を計上できた原因は棚卸資産にあるのです。

P社は倍々と売上高、当期利益を伸ばしてきました。前日掲載した資金バランスグラフに対応する2期の売上高と当期利益は売上高が59億円から97億円に、当期利益は4億円から8億円に伸びました。その結果損益資金は9億円から21億円になりました。羨ましいほどの成果です。

友がきは皆世を去りて十二月


資金会計原論Theory of Cash by Funds17.12 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月2日09:33:03

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.13 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

緑 棚卸資産が増えると利益も増える。利益が増えればCashが増える筈だけど、棚卸資産は資金を消費した結果なので、棚卸資産の増加は本当の利益ではないのでは?

父 その通り。1130日に添付した在庫利益を示す図は当期利益8億円に対して本当の利益が赤字11億円です。来期も同じような状態だとすると、借入金の返済はできません。短期借入金22億円は杓子定規に言えば1年以内に返済するものだからです。万一返済をせずに繰り回しに成功したとしても、更なる借入をしなければ回っていかないのです。P社は輝かしい成果にもかかわらず、実質損益資金(Cash利益、概念的には営業活動によるキャッシュフロと同じ)が赤字です。P社の場合はこの赤字額が粉飾で開いた穴です。2006/06期はこの穴9億円(資金別P/L参照)は20億の増資額で埋められました、2007/06期の穴8億円は短期借入金22億円で埋められました。次期に広がるであろうこの穴は何によって埋められるのでしょうか、今度は金融機関も騙されないでしょう。万事休すです。
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資金会計原論Theory of Cash by Funds17.14 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月3日18:00:58

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.14 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続
緑 佐藤先生は1986年(昭和61年)には「損益」と「資金」は別物であるということは誤りであることがわかりましたと、述べておられるとお聞きしましたが。

父 そう、それはSchmalenbach(1889から1955)に代表される動態論なのだ。一航海一事業(One voyage one enterprise)の会計では航海を終わった段階での「収益」=「増えたCash」ですが、期間成果を計算するようになって「期間収益」≠「Cash増減額」となった。そこで次期損益計算書とを繫ぐ環として貸借対照表が作られた。佐藤先生は損益資金がCashとして残るのが理想だと言っておられた。その発言にはこのような背景があったものと思う。そしてこのようにCashフローが背後に潜んでいるのが動態論による近代会計だと思う。常に黒子として背後にあるCashフローを表舞台に引き出したのが資金別貸借対照表で、資金別貸借対照表と次期資金別貸借対照表を繫ぐ環はCash増減額です。そして3期資金別貸借対照表のBottom lineCashそのものの流れです。
                 
友がきは皆世を去りて十二月


資金会計原論Theory of Cash by Funds17.15 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月4日10:54:34

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.15 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続
緑 日本で第3の財務諸表、キャッシュフロー計算書の作成が義務付けられたのが今世紀初頭ですから、佐藤先生が1986年(昭和61年)に財務諸表の裏に潜むキャッシュフローの存在を見破っておられたことは凄いことね。

父 緑の引用は佐藤先生の私家版「実践資金管理会計」の序文からだったと思う。佐藤先生のお考えはSchmalenbachに極めて近い。私は先生が特に動態論を研究されたとは思われない。佐藤先生は例えば減価償却を定率法でする場合と定額法でする場合で当期利益が違ってくる。なぜ当期利益がやり方によって違ってくるのか、何故だれが決算しても同じ当期利益にならないのか、について真剣に悩み、メモと鉛筆を枕元に置き思いついたことをメモしておき、資金会計理論が生まれたと聞いています。Schmalenbach との考え方の符合は偶然だと思います。戦後GHQの肝いりで1950年頃より日本での公認会計士制度の

導入が思案され、戦時中の会計学のブランクを埋めるために日本の会計学者は猛勉強をはじめ、動態論が花形として紹介されました。日本で第3の財務諸表の制度化は今世紀初頭でした。佐藤先生の私家版「実践資金管理会計」は1989年の出版ですから、佐藤先生はキャッシュフロー計算書を意識しておられなかった筈で、佐藤先生が苦悩のメモから、資金会計理論が誕生したことに畏敬の念を憶えます。

                                          凩の筆跡残る由比ガ浜

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.14 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月7日11:01:47

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.14 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

緑 優良な会社京セラもリーマンショックを受けたようね。

父 リーマンショックは多くの会社がその影響を受けたが、ショックの吸収の程度には差異があった。その程度の差はJAL ANAで述べたが、京セラを例にこの問題に取り組んでみたい。Data for Blog.xls(ファイルサイズ:70.5KB)ファイル

京セラの添付ファイルの資金スコアボードシートを見てください。一番大きな資金は損益資金ですね。内部留保の大きい一番良い型です。優等生京セラでもリーマンショックのあった2009/03期の資金別損益計算書では損益資金が出金側にきてしまいました。その結果、実質損益資金は1,703億円減少しました。この赤字は固定投資1012億円の整理と、長期借入金313億円と、Cashによって埋められました。添付ファイル格付他シートご参照

9/03期の格付はショックがあったのにもかかわらず+10の高いポイントで資金状態も良好です。さすが京セラということができます。実質損益資金は減りましたが過去の蓄積した内部留保が減少しただけで、払込資本金はびくともしません。

          侘助や小さき老婆が住むといふ

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.15 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月9日15:46:10

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.15 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

緑 京セラはリーマンショックで売上高や利益は減ったけど、実質無借金じゃない? 

父 添付ファイルをData for Blog.xls(ファイルサイズ:70KB)開け、「格付他」シートをご覧下さい。リーマンショック(以後LSと称する)である9/03期の実質損益資金は1,703億円でした。これは前期末の実質損益資金11,321億円の15%でした。内部留保の大きな企業はショックに強いことを物語っています。そしてCashの手持ちの大きいことも有利でした。LSを蒙りながら「その他流動資金」として2,527億円の支出もしました。その内訳は短期投資2,021億円、自己株式506億円です。「資金BAL集約」シートを開けてください。黄色のセル、オーナー残存資金(固定投資まで自己資金だけで賄ったと仮定した資金残高)は+3,859億円で、借入金不要の状態です。しかし借入金が350億円増えましたが長短借入金合計715億円はCash残高が2,692億円あるので、即、返済できる額です。資金バランスで損益資金が一番大きな企業の実力を見た気がします。

                                          侘助の茶会衣擦れいや高し


資金会計原論Theory of Cash by Funds17.16 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

12月11日12:17:19

資金会計原論Theory of Cash by Funds17.16 今、何故、資金別貸借対照表なのか-続

緑 企業は将来も継続して利益(⊿G)を獲得できるように、固定投資のメンテナンス、新規投資、除却をするでしょう、固定投資が回収されているかどうか、どうやって診るの?
父 緑、そこが今までの財務分析であまり触れられていなかったといってよい。ROAという指標はあったが、分母の総資産はあまりに漠然としていて、ROAを他企業と比較するには不向きです。シュマーレンバッハば購入暖簾を10年で償却したと聞いている。当時の静態論者も10年といっていたそうです。GE社の有名なウエルチCEOの前任者ジョウンズCEO(財務畑出身)は“定期預金の金利も稼げない事業からは撤退し預金にしておく方がましだ”としてGE社の財務基盤の整備をしたと、きいています。当時の日本の定期預金金利は5%でした。ジョウンズCEOの発言はROAを意識していたときいています。償却資産ばかりではなく、土地、無形固定資産、建設仮勘定、投資を含む固定投資を10年で回収できなければ、利益(⊿実質損益資金)が不足しているか、固定投資が過剰なのです。京セラはリーマンショックの期には⊿実質損益資金が赤字だったので付加価値はありませんが、その前年8/03期には固定投資を5年で回収でき、10年での付加価値率は63.8%と高率でした。添付ファイルData for Blog.xls(ファイルサイズ:75KB)の「格付他」シートの「投資効率」をご覧下さい。

結論として言えることは過去の堅実経営により京セラはリーマンショックを乗り切ることができました。まだ余裕がありますが、今後の良い舵取りを期待しています。

                                          侘助や掛軸の歌の秘めし恋