資金会計原論Theory of Cash by Funds 33 井上工業
緑 東証2部上場の井上工業が破綻したわね。井上工業は故田中角栄総理が若い頃、住み込みで働いていた会社と聞いています。高崎観音を作った会社で話題となりました。
井上工業 データハイライト.xls(ファイルサイズ:50.5KB)
父 EDINETでは2006年3月期以前の有証データが得られないので、推測を含めた分析になるのは仕方ありません。
2006/3期の監査法人は中央青山で、2007/3期はみすず監査法人に替わっています、そして更に2008/3期は優成監査法人に替わっています。毎期担当監査法人が替わるようでは、取引銀行も付き合いきれません。添付データ・ハイライトの借入金合計をごらん下さい。銀行は貸しはがしに出たようです。その間の資金繰りは豊富なCashを食い潰すことによって賄われました。それに追い討ちをかけたのが資本の欠け込みです。添付資金スコアボ-ドの2006/3期の資金バランスグラフをご覧ください。損益資金が運用側にあり、売上仕入資金と棚卸資産の3者合計が資本金を食い潰しているのが解かります。棚卸資産の下線を調達側に延長するとその線から上の資本金が欠け込んでいるのが解かります。2007/3期と2008/3期には損益資金は調達側にありますが、棚卸資産の下線の延長線上の損益資金(内部留保)と資本金が欠け込んでいます。その上Cashの凋落も著しいことが解かります。資金調達が八方塞りの状態で考えた資金調達手段は増資をすることでした。第三者割り当てに選ばれたのが金融ブローカーでした。金融ブローカーは18億円の増資引き受けに対して井上工業に15億円の振込を要求し18億円を井上工業に振込みました。正味3億円が実質増資額でした。2008/10/16に破産手続開始が決定されたので、2008/3以降の勘定の動きは掴めません。
破綻が近い会社に現れる型に 「Cash>損益資金」 があります。井上工業は3期前からこの型がでています。2008/3期は「Cash<損益資金」ですが、それは当期利益814百万円が計上されたからです。しかしその利益の中身は854百万円が棚卸資産増加によるもので、資金的には全く貢献しない利益です。本当の業績は-40百万円の赤字です。損益資金から在庫利益を差引くと2008/3期も「Cash>損益資金」型です。この型を示した後に破綻した企業又は破綻してもおかしくない企業を例示すると大王製紙、オリンパス、富士バイオテック、アソシエントテクノロジー、サンビシ、カネボウ、等々です。この型が現れた期か次の期に大きな動きがあります。
井上工業の資金スコアボードとデータ・ハイライトをご覧下さい。2006/3期に-4,465百万の大赤字を出しましたが、その主な原因は3,903百万円の減損損失でした。
これは推測ですが、2001/3期より時価会計を導入すべきなのに2006/3期にやっと実施できたのでしょう。
2007/3に終わる資金別損益計算書グラフをご覧下さい。出金側に大きな資本金、入金側にほぼ同額の損益資金が計上されています。これは資本剰余金で繰越欠損金を補填したものです。2008/3期はすでに述べたごとく、実質的には「Cash>損益資金」型で次期の半ばに井上工業は破産しました。
「Cash>損益資金」の判断にも例外があります。例えば超CashリッチなSMSとゆう
医療機関向けの人材派遣会社は「Cash>損益資金」ですが「実質損益資金(Cash利益)>当期利益」の羨ましい会社です。
遠火事のたまさか弾く火の粉かな